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■「公益法人等の抜本改革」『中間整理』に対する見解
 

2004年4月18日
NPOサポートセンター

 

1 経 緯

 内閣官房行政改革推進事務局(行政改革担当金子一義大臣)は昨年11月に設けた『公益法人制度改革に関する有識者会議』で、公益法人制度の廃止と新たに設ける非営利法人制度について検討を進め、3月31日に『議論の中間整理』を発表した。それに基づいて、5月10日を締め切りとする意見募集も行われている。しかし意見募集を呼びかけた時点でもこれまで開かれた9回の有識者会議中、2回分の議事録(残りは議事概要)しか公表されておらず、きわめて不十分な状態での意見募集だと言わざるを得ない。
 『中間整理』では税制の議論を詰めておらず、今後の政府税調の議論に委ねられる。両者の結論は今年末までに出される。同時に「現行の中間法人制度・NPO 法人制度との法制上の関係も整理することとする」とされている。
 こうした動き対して我々は、一昨年3月来、有識者会議での検討のもととなった「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(2003年6月27日閣議決定)の策定過程に警鐘を鳴らし、検討されている事柄が全市民社会に深刻な影響を与えることだという点を強調して行動を起こした。とくに一昨年末からは連続行動を提起し、数次にわたる集会や『NPO・公益法人改革の罠―市民社会への提言』の出版を行い問題の提起を行ってきたところである。
 我々はこの本の中で次の点を指摘した。

1)戦後市民社会は、政府が市民活動の内容領域に介入しないという原則を憲法上で確認してきた。したがって任意団体による活動とともにNPOを含む幅広い市民活動団体は非課税を不介入の権利として保持している。
2)この非課税の権利(税を免除してもらうという免税でなく、権利としての)は市民社会の進展にともなって、社会的活動・社会的相互扶助・社会的協働を政府の税の投入によるのではなく、非課税になった資源を市民自らが投入するという、一種の選択的納税制を実現するものとなった。この二つのことは、公益法人改革がもし「原則課税」の結論を出すなら、NPO法人だけでなく、広く市民社会一般に対する脅威となっていることを示している。税の問題はお金を取られるかどうかという次元の問題でなく、政府と市民社会のあるべき距離の問題である。
3)NPO法人にとって見れば、現在は認証という裁量を排除した手続きで法人格を取得し、公益法人に準拠する非課税ステータスを得ているものが、同じステータスを得るのに今度は審査と許可を要することになる。事実上のNPO設立「許可制」である。

 だから我々は、課税を原則とする一般非営利法人制度に反対せざるを得ない。非課税権利を含む一般非営利法人を作り出さなければならない。その前段で、原則課税を飲み込まされた、中間法人法を変え、市民活動への非課税の原則をはっきりさせるべきである。「特定」の非営利活動だけでない非営利活動一般に、NPO法の仕組み・枠組みを発展させた制度を私たちは生み出していく義務があると我々は感じている。公益法人に関する税制度は、公益法人だけの税制度の問題ではなく、「課税」の問題だけでもなく、ましてや、政府税調が決めればよい問題でもない。有識者会議が自らの責任で、市民活動「非課税」の原則を守り通すことを求める。
 このような観点からすれば、NPO法人も公益法人改革の直接の当事者である。しかるに有識者会議には、当事者としてのNPO関係者が議論から外されている。
 『中間整理』はこうした状況の下で作られている。

 

2 『中間整理』のポイント

(1)新たな非営利法人制度
1)営利(剰余金の分配)を目的としない民間団体について、公益性の有無に関わらず、一般的に法人格取得の機会を与える。準則主義(登記)により簡便に法人格を取得できる非営利法人制度を創設する。(非営利社団法人)。
2)非営利法人の事業には制限を設けない。
3)「非営利社団法人」の社員の権利・義務の内容として、@出資義務を負わない、A利益(剰余金)分配請求権を有しない、B残余財産分配請求権を有しない、C法人財産に対する持分を有しないこととする。
4)定款で定めれば社員が出資する(財産の拠出をする)法人を設立することも可能とする。
5)解散後の残余財産の帰属については、定款又は社員総会の決議によって定めることとし、その結果、残余財産を社員に帰属させることも妨げないこととする。

(2)公益性を取り扱う仕組み
1)公益性を有する非営利法人について税制上の措置など特別な取扱いをする。
2)公益性を取り扱う仕組みについて二つの考え方がある。
[考え方A−公益性に相応しい規律の法人の受け皿の仕組みを民法等で規定]公益性の判断主体は「中立で第三者的な、又は、単一の公的機関」。
[考え方B−税法以外に公益性を取り扱う仕組みを特に設けない]公益性の判断主体は「課税庁が考えられる」。
 もう一つの考え方として当然、「国等の機関が公益性の判断を行わず、民間機関が行うこととする」という方式もありうる。しかしこの方式は「公益性に着目して特別の法律的取扱いを国等から受けることとする場合、公益性判断を民間機関に委ねてしまうことは必ずしも適当ではないのではないかとの意見があった」として検討から外されている。
3)公益性の要件として、形式要件に加え活動実績を求めるか、当初の判断時と事業継続時で異なる要件とするかを検討する。公益法人指導監督基準、NPO法人制度等の規定や実態を踏まえ、数値基準を含め具体的要件を検討する。
『中間整理』の内容は以上である。

 

3 行動

 この『中間整理』の発表に先立つ3月25日、我々は、第9回の有識者会議に、公益法人改革の枠組みに反対するというメッセージを伝えるべく、緊急の記者会見をNPOサポートセンターで開いた。報道各社が集まり、毎日、朝日が翌日の記事で取り上げ、京都新聞も後日報道した。朝日新聞は調査報道で、有識者会議における事務局の意図と内情を報じた。翌朝、記者会見で公表した我々の見解を行革推進事務局に申し入れた。
 26日午後、9回目の有識者会議が開かれて『中間整理』の内容が固まった。26日朝の我々の申し入れの趣旨が反映される兆しがなかったので、『中間整理』の公表前に再度予想される内容についての批判と、あるべき非営利法人制度についての提案を行革推進事務局宛申し入れ、内容を郵送した
 『中間整理』の公表後の4月2日、『中間整理』の内容について、行革推進事務局と意見交換の場を持った。その場で我々は以下のような見解を述べ改善を求めた。また迅速適時の情報公開を求め、広く多様な層の意見を求めることを要求した。我々の見解は、

(1)非営利社団法人において、非営利(=利益を分配しない)法人なのに解散時に残余財産を分配できるとしている点は不適切である。むしろ残余財産の分配を禁止ないしは強く規制すべきである。残余財産を社員に帰属させることを許す制度は中間法人と同じである。中間法人を非営利法人に統合する方向も示されている中では、中間法人と同じく寄付や会費も含め全ての収入が法人税の課税対象になり、政府税調において、昨年問題となった「非営利法人は法人税を原則課税」という政府案が復活することは明白だ。

(2)出資(財産拠出)を受けた場合の非営利法人における諸規定(社員と法人の関係、利払い配当の可否、議決権、持分の有無、残余財産の分配と出資返還)が十分に検討されていない。今後は、行革事務局や政府税調の委員と出資を必要とする非営利事業の実務者の間の意見交換を図ることが求められる。

(3)税法以外に公益性を取り扱う仕組みを特に設けない[考え方B]を示していることは問題だ。有識者会議では多数の委員が公益性を税法以外で規定する考え方Aを支持したのに考え方Bが残った。積極的に考え方Bを推した委員がいるのか、国等の機関が公益性の判断を行わず、民間機関が行うこととする考え方を検討から外すべきだと主張した委員がいたのかは、議事録が明らかになっていない時点では確認のしようもない。早く議事録を公表するとともに民間機関が公益性の判断を行う考え方を再検討すべきだ。

(4)考え方AとBとの両方を政府税調の持ち込んだとき、政府税調は、「税法以外」と指定されている考え方Aについて議論する権限を持たず、税制は関与しないとの決定以外、考え方Bについてのみ議論せざるを得ない。好むと好まざるにかかわらず(国税当局は公益性の判断を税務当局だけが行うことを望んでいるわけではないとまことしやかに伝えられている状況で)、政府税調は考え方Bに基づいた決定せざるを得なくなる。A、B両方の案を送ること自体論理的にB案しか採用しないというシグナルであり、そのような明白な意図がないとしても結果からみれば未必の故意である。

(5)公益法人改革の目的と示された手段の間に大きな齟齬がある。「@主務官庁の自由裁量による許可主義の下、法人設立が簡便でなく、A事業分野毎の主務官庁による指導監督が煩雑、B情報開示(ディスクロージャー)が不十分、C公益性の判断基準が不明確、D公益性を失った法人が公益法人として存続し続ける、Eガバナンス(法人の管理運営のあり方)に問題がある」といった指摘が事実であるなら、主務官庁制の廃止と簡便な公益法人設立の制度、公益性の判断基準の明確化、ディスクロージャとガバナンスの強化、法人廃止基準の作成などの具体策が示されるべきである。その具体策の議論がないまま、課題との関連の不明確な非営利社団法人の構想や、公益性を課税庁のみが判断するという本末を転倒した議論だけが延々と行われている。現在非営利法人設立の大勢となっている(公益法人等非営利法人、協同組合法人を併せてもNPO法人の設立数は圧倒的に多い)NPO法人の「認証」制度をまず導入し、さらにディスクロージャとガバナンスの強化によって問題を解決すべきである。「認証」制度に問題があるのならそう主張すべきであり、無関係を装ってすべての非営利セクターを非営利社団法人の仕組みのもとにおこうとするのは問題の本質を見誤る行為だ。主務官庁制を否定するのに、公益性の判断は(課税庁のみの案を最有力とする)行政が自ら行うというのは自己撞着である。単一行政組織による公益性判断というのは、単に縦割り行政が悪いということへの対処療法でしかない。現行の特定公益増進法人、認定NPO法人制度は最終的には課税庁の判断、それも一部数値基準を設けての判断となっているが、この制度によって公益が納得のいく形で判断されているとは到底いえない。

(6)非営利社団法人の構想は、全市民社会へ深刻な影響をもたらし、法人税法等の根本的な見直しにつながるものであり、憲法上の権利がないがしろにされる危険をはらむ。この構想の撤回と具体的な効果の上がる公益法人改革の提案への転換を強く求める。

 こうした我々の主張に対して、行革推進事務局側は、次のように述べた。隠された意図などというようなものはない。情報公開の遅れも意図的なものではなく、手続きが停滞しているだけである。考え方Bを事務局が無理に推しているという事実はなく、もしそうした伝聞があるのなら積極的に否定して欲しい。『中間整理』をもって広く意見を国民に求め、案に反映していきたい。今後ともNPO側との信頼醸成につとめたい。ただ、非営利社団法人の段階で、残余財産の社員への分配を禁止する規定を設けることが可能か、公益性を判断されることによって得られる法人の法律上の効果が税制上のもの、税の減免以外にあるのかという点に関しては確信できる答えを持っていない。
 これに対して我々は、再度主張を繰り返すとともに、NPO法人は現行の社団法人の数を既に上回り、なおかつ社団法人を圧倒的に上回るスピードで増加している。市民活動の標準的な法人形態はNPO法人となっている。それを公益法人改革に名を借りて、論理的にはNPO法人制度の根本を崩す(原則課税への転換、認証制の廃止)改革が行われようとしているのは、尻尾が犬を振り回そうとする図であると強調した。
 議論の公開と幅広い意見を採り入れることの重要性については一致したものの、内容に関する議論は平行線をたどった。
 現時点でも以下に示す我々の意見は有効である。多くの市民社会諸団体が関心を持ち、議論の場に参加されることを望む。


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